15、16世紀を中心に開花した「ルネッサンス文化*」が、あらゆるジャンルの芸術に豊かさをもたらしたその時代、バレエはイタリアで誕生した。
※古代ギリシア・ローマ文化の”復興”=ルネッサンス、の意味。 神々ではなく人間を中心に据えた、ヒューマニズム文化。
ここでは、1580年代の宮廷文化から、1930年代のバレエ・リュスの時代までを振り返ります。
イタリア・フェレンツェのメディチ家よりフランス王室アンリ2世に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスの命により1581年に上演された宮廷バレエが「王妃のバレエ・コミック」。5時間半を費やし、朗読、歌、演奏、踊りなどを交えたというそれは、当時の宮廷文化の優雅な時間の流れを感じさせる。
自身が踊ることを愛したルイ14世は宮廷バレエの中心的存在に。1653年に宮廷で上演した「夜のバレエ」では彼自身が太陽王アポロンに踊る。
1661年、ルイ14世は現在のパリ・オペラ座バレエ団の前身でもある「王立舞踏アカデミー」を創立。当時、王のもとで振付家・ダンサーとして活躍していたボーシャンの弟子、フィエが残した書物には、バレエの基本ポジション、アン・ドゥオールなどについて解説されている。
「職業ダンサー=プロ」という存在が登場。そうしたダンサーがヨーロッパ各地で踊るようになる。その代表的ひとりがマリー・カマルゴ。重々しいロングドレスで踊っていたその時代に、スカートの裾をくるぶしが見えるほどに短くし、それまで男性の技であったアントルシャやカブリオールなどを披露して、話題に。同時代、同じくパリ・オペラ座で活躍していた「ヴェトリス父子」も、バレエの改革者として有名。
1773年、スウェーデン王立バレエ、モスクワ舞踏アカデミー(後のボリショイバレエ学校)。1777年、デンマーク王立バレエ。1783年マリインスキー帝室バレエ団などが設立される。そして、1789年、フランス革命勃発。宮廷バレエはなくなり、その後台頭したブルショワジー(大資本家)たちの影響が、舞台芸術環境にも変化をもたらす。
1832年、パリ・オペラ座で初演された「ラ・シルフィード」で、女性ダンサーは初めて白いロマンティックチュチュを身に着けトゥシューズを履いた!1841年、パリ・オペラ座で「ジゼル」を初演。主役を踊ったカルロッタ・グリジは当たり役としてのちに名を残す。(あらゆる芸術において、感情や想像力を揺さぶるものが尊重されるようになったこの時代。異世界を題材にしたこれらの作品は圧倒的な支持を得た。)
1847年、フランス・マルセイユ生まれのマリウス・プティパがマリインスキー帝室バレエ団に、ダンサーとして招かれる。その後バレエマスターになり「海賊」「ジゼル」などロマンティックバレエの時代に作られた作品を次々と改訂。また、「眠れる森の美女」以降の3作品は大音楽家・チャイコフスキーとともに創作したクラシック・バレエの名作中の名作。弟子のイワノフの存在も大きい。
◆プティパの残した主な作品
1869年「ドン・キホーテ」、1877年「ラ・バヤデール」、1890年「眠れる森の美女」、1892年「くるみ割り人形」、1895年「白鳥の湖」(これまでのロマンティック・バレエはマイムが中心。脚を高く上げたり、跳んだり、ましてや男女が組んでアクロバティックな技を披露することはなかった。しかしプティパは、踊りの最たるものが”グラン・パ・ド・ドゥ”の確立といえよう。)
※”グラン・パ・ド・ドゥ”とは
主役男女のダンサーが2人でアダージオを踊り、それぞれのヴァリエーションを踊って、最後にコーダで締めくくるというスタイルをいう。
1903年、プティパは引退。彼に影響を受けつつ、しかし新たな創作を試みたいと思ったダンサーたちが集まり立ち上げたのが、ディアギレフ率いる「バレエ・リュス=ロシア・バレエ団」。第1回公演は1909年、パリ・シャトレ座にて。デザイナーや画家たちとコラボレーションして誕生した斬新な舞台美術、振り付け、そして男性ダンサー、なかでもニジンスキーの獣のようなしなやかで美しい存在感が、注目を集める。バレエ・リュスの活動は、ディアギレフ死去の1929年まで続き、ジャン・コクトーからココ・シャネルに至るまで幅広いアーティストを巻き込み、芸術界に影響を与える。
バレエ・リュスは「オリジナル・バレエ・リュス」と「バレエ・リュス・ド・モンティカルロ」に分裂しながらも、1960年代まで活動を継続。その後、このバレエ・リュスの申し子たちは世界各地に散らばり、バレエの伝道に努める。
二ネット・ド・ヴァロワ
母国に戻り英国ロイヤルバレエの前身である「ヴィック・ウェルズ・バレエ」創立。
ジョージ・バランシン
ニューヨークに渡り「バレエ・ソサエティ」(後のニューヨーク・シティ・バレエ)創立。
セルジュ・リファール
パリ・オペラ座バレエ団の芸術監督となり、低迷していたバレエ団を立て直す。
チャコット株式会社「ダンスMove」より抜粋
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